「元請からの指値発注が厳しく、原価を割っても断れない……」
「無理な短工期を押し付けられ、現場が疲弊している……」
そんな悩みを抱える建設会社の皆様にとって、建設業法は自社を守るための「最強の武器」になります。
今や国交省の指針は「下請を守る」方向へ大きく舵を切っています。
本記事では、19条の3(代金)、4(資材)、5(工期)の禁止規定を掘り下げ、不当な要求を法的に拒絶するための具体的基準を明らかにします。
1. 不当に低い請負代金の禁止(第19条の3)
注文者が「自己の取引上の地位を不当に利用」して、通常必要と認められる原価に満たない金額で契約を締結する行為を指します。
【「原価」の範囲と公的定義】
行政資料(原価の算定基準)では、以下の合計額を「総括原価」と定義し、これが契約価格の基礎となります。単なる材料費だけでなく、適正な利益も含まれるべきものとされています。
① 営業費(現場原価+一般管理費)
・人件費、燃料油脂費、修繕費、減価償却費、運送費等
・直接工事費(材料費、労務費、機械経費)
・間接工事費(共通仮設費、安全対策費、法定福利費等の現場管理費)
・一般管理費(本社経費など、会社の維持に必要な費用)
② 営業外費用
③ 適正利潤(事業の報酬)
※これらを合算したものが「総括原価」であり、この範囲を下回る不当な価格押し付けは、法第19条の3に抵触するおそれがあります。
▶建設業法順守ガイドライン
【行政資料が示す「代金」の違反ポイント】
① 指値発注(法第19条の3等):
金額の合意がないまま工事に着手させ、後に元請が一方的に低い代金を決定し契約させる行為。
② 不当な赤伝処理(法第19条の3等):
下請と合意なく、建設廃棄物の処理費用などを下請代金から一方的に差し引く行為。
③ 長期手形の禁止(法第24条の6第3項):
手形期間が120日(令和6年11月以降は60日)を超える長期手形による支払い。
![建設業法違反のポイント図解]()
2. 不当な購入強制等の禁止(第19条の4)
注文者が、資材や機械器具の購入先を指定し、請負人の利益を不当に害することを禁止しています。元請の利益(バックマージン等)を目的とした指定は法違反のリスクが高まります。
3. 不当に短い工期の禁止(第19条の5)
働き方改革による時間外労働上限規制により、現在最も厳格に運用されている条文です。
著しく短い工期の禁止事例
3. 不当に短い工期の禁止(第19条の5)
働き方改革による時間外労働上限規制により、現在最も厳格に運用されている条文です。
著しく短い工期の禁止事例
【建設業法上「違反」となる行為】
⑦ 長時間労働の前提:
現場従事者の時間外労働上限規制に抵触するような長時間労働を前提とした工期設定。
【建設業法上「違反のおそれ」がある事例】
- ① 早期引渡しのための一方的な短期間提示。
- ② 「工期に関する基準」を考慮しない最短見積の採用。
- ③ 不稼働日(猛暑日等)や休日を無視した契約。
- ④ 変更時の不当な工期短縮。
- ⑤ 設計変更や図面承認遅れに伴う工期延長拒否。
- ⑥ トラブル発生時の変更協議不応諾。
出典:国土交通省資料「取引適正化の取組」
4. 行政処分と社会的リスク
19条の3〜5に違反した場合、「勧告」や「社名および違反事実の公表」が行われます。これは公共工事の指名停止や民間取引の失墜に直結する甚大なダメージとなります。
まとめ
適正な契約締結は、現場の安全と品質を守るための「防波堤」です。
2027年の開業に向け、こうした建設業法の実務解釈をさらに深掘りし、建設業者の皆様の経営を守るためのサポートを準備しています。
留意事項
当ブログの記事は、行政書士試験合格者としての学習・研究の一環として作成したものです。現時点では行政書士登録前の立場であり、専門家としての助言や業務提供を目的とした内容ではありません。最新の法改正や個別事情については、必ず行政庁や行政書士等の専門家へご確認ください。
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