技術者不足の現場を救う「兼務」のルールとは?
建設現場を預かる企業にとって、
「主任技術者の配置」は常に悩みの種です。特に人手不足が深刻な昨今、「技術者が足りないために受注を諦める」という事態は避けたいもの。そこで浮上するのが、
『主任技術者は複数の現場を兼務できるのか?』という疑問です。
結論から言えば、
一定の条件を満たせば兼務は可能です。しかし、建設業法には「専任義務」という厳しい壁があり、ここを正しく理解していないと法令違反のリスクを負うことになります。
本記事では、専任が必要な要件から、令和の改正で注目される「専任特例」、さらには専門工事一括管理施工制度まで、実務に直結する知識を整理して解説します。
【この記事の要約】
- 4,500万円(一式9,000万円)未満の工事は原則兼務OK
- 専任現場でも「専任特例」の8要件を満たせば2件まで兼務可能
- 「密接な関係」にある近接工事は効率的な配置ができる
- 「専門工事一括管理」により下請の主任技術者を不要にできる
1. 主任技術者の「専任」が求められる基準
公共性のある施設や多数の者が利用する施設に関する工事では、適正な施工を確保するため、原則として工事現場ごとに
「専任」の技術者が求められます。
工事の種類 |
専任が必要な請負代金 |
一般の建設工事 |
4,500万円以上 |
建築一式工事 |
9,000万円以上 |
混同注意:建設業許可の下請代金
一般建設業許可:5,000万円未満(一式8,000万円未満)
特定建設業許可:5,000万円以上(一式8,000万円以上)
非専任現場(金額未満)での兼務
上記金額に満たない現場(非専任現場)については、法律上兼務を禁止する規定はありません。主任技術者としての職務(施工計画の作成、工程・品質管理、指導監督等)が果たせるのであれば、兼務は問題ないと考えられています。
※毎日行う会議への参加は要しないが、主要な工程会議等には参加し、管理を行うことが求められます。
① 専任現場で兼務が認められるケース「専任特例 第1号」
次の
8つの要件をすべて満たす場合、専任を要する工事現場であっても、他の現場(専任・非専任問わず)を
2つまで兼務することができます。
- 代金制限:各工事の請負代金が1億円未満(建築一式は2億円未満)であること。
- 移動距離:勤務時間内に巡回可能で、事故発生時等におおむね片道2時間以内で移動できること。
- 下請次数:注文者となった下請契約から数えて下請次数が3を超えないこと。
- 連絡員の配置:技術者と連絡を取るための「連絡員」を当該工事に置いていること。
- 体制確認(ICT):施工体制をICTを利用する方法により確認するための措置を講じていること。
- 配置計画書の作成・備付:以下の事項を記載した計画書を現場ごとに備え置くこと。
- 建設業者の名称・所在地、技術者の氏名
- 技術者の1日あたりの労働時間実績および見込み
- 工事名称・所在地・内容・請負代金額
- 下請次数、連絡員の氏名・所属・経験
- 体制把握のためのICT、現場状況把握のためのICT機器
- 遠隔確認環境の整備:現場状況を確認するための「映像および音声」の送受信が可能なICT機器が設置され、通信環境が確保されていること。
- 兼務数の上限:兼務する建設工事の数は2つを超えないこと。
② 密接な関係・近接した工事
同一の建設業者が、同一の場所または近接した場所(相互間隔が10km程度以内)において施工する場合は、専任の主任技術者がこれらを兼務(原則2件程度)できます。
■ 密接な関係にある工事の例:
・資材を一括で調整し、相互に工程調整を要するもの
・工事の相当部分を同一の下請業者で施工し、相互に工程調整を要するもの
③ 同一または連続する工作物の複数契約
発注者が同一・別々に関わらず、次の条件を満たす場合は複数の工事を「一つの工事」とみなし、同一の主任技術者が兼務できます。
※すべての発注者から書面による事前承諾が必要です。
- 1. 契約工期の重複する複数の請負契約に係る工事であること
- 2. それぞれの工事の対象となる工作物等に一体性が認められること
※注意:合算額が4,500万円(一式9,000万円)以上となる場合は、この「一つの現場」に対して専任配置が必要ですが、①・②の特例を併用することが可能です。
専門工事一括管理施工制度
次のすべての要件を満たす場合、下請業者の主任技術者の設置を不要とできる制度です。
- 対象工事:鉄筋工事、型枠工事(施工技術が画一的なもの)
- 請負金額:下請契約の代金が4,500万円未満
- 手続き:注文者・元請・下請の3者間で合意し、注文者の書面承諾を得ること
- 上位技術者の要件:1年以上の指導監督的実務経験を有し、現場に「専任」であること
- 再下請の禁止:この制度を適用する場合、再下請(孫請)は一切禁止されます
まとめ:正しい知識で「現場のムリ・ムダ」をなくす
今回のポイントおさらい
- まずは「請負金額」で専任の要否を判断する。
- 専任が必要でも、ICT活用や近接特例の要件を満たせば2件まで兼務可能。
- 特例適用時は「連絡員の配置」や「配置計画書の備付」など詳細な義務を守る。
- 「専門工事一括管理」を使い、協力会社との連携を最適化する。
ルールを正しく把握し、制度を賢く活用することで、コンプライアンスを守りながら効率的な現場運営を実現しましょう。
※留意事項
当ブログの記事は、行政書士試験合格者としての学習・研究の一環として作成したものです。現時点では行政書士登録前の立場であり、専門家としての助言や業務提供を目的とした内容ではありません。最新の法改正や個別事情については、必ず行政庁や専門家へご確認ください。