建設工事追加工事の「言った言わない」トラブル!口頭契約の有効性と建設業法

建設工事追加工事の「言った言わない」トラブル!口頭契約の有効性と建設業法

追加工事の「聞いていない・頼んでいない」という踏み倒しトラブル。民法上の諾成契約(口頭契約)の成立要件と、
建設業法第19条(書面交付義務)および19条の3(不当に低い請負代金の禁止)の違法性を解説。

福島県 建設業許可|建設工事の追加工事で口頭契約は有効?建設業法19条と踏み倒し


建設工事の「口頭契約・口約束」は有効か?追加工事の「言った言わない」と踏み倒しの違法性を解説



建設現場において、「とりあえず急ぎだから追加でやっておいて!後でまとめて精算するから」といった元請や注文者からの口頭(口約束)による指示で追加工事を行ってしまうケースは後を絶ちません。

そして工事が完了した後、いざ請求書を出すと「そんな高い金額は聞いていない」「頼んだ覚えはない」と言われ、追加工事費用を踏み倒されてしまうトラブルが頻発しています。今回は、民法上の「諾成契約(口約束)」の法律的ルールと、建設業法第19条が定める書面交付義務違反および不当な踏み倒しの違法性について徹底解説します!



民法における口頭契約の基本原則


「そもそも、口頭(口約束)だけで契約なんて成立するのか?」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。私自身、行政書士試験を通して民法を学習していなければ、口約束で契約が法的効力を持つなんて思いもしませんでした。


📜 民法における「諾成契約(だくせいけいやく)」とは



民法における大半の契約(売買契約・賃貸借契約・請負契約など)は、「諾成契約」が基本原則です。これは、契約書や書面がなくても、当事者同士の「合意の意思表示(頼む/引き受ける)」のみで成立する契約のことです。契約締結の申し込みに対して相手方が承諾した瞬間から、当事者には契約上の法的な義務が発生します。




つまり法律上は、現場で「この追加工事やっておいて」「分かりました」とやり取りした時点で、合意に基づく請負契約自体は成立していることになります。

現場における口頭契約の最大の課題


民法上は口約束でも契約が成立するとはいえ、実際の建設現場で口頭契約のまま工事を進めてしまうことには、決定的なリスクと課題が存在します。


⚠️ 口頭契約における最大の落とし穴:立証の壁



口約束の最大の課題は、「追加工事の金額」や「正確な工事範囲」に関する客観的な証拠が残らない点です。

いざ相手方が代金の未払いや踏み倒し(「聞いていない」「頼んでいない」)を起こした際、裁判や調停の場で「どのような内容でいくらの約束をしたのか」を施工者側が証明(立証)することが極めて困難になります。




建設業法第19条が義務付ける書面交付ルール


こうしたトラブルを未然に防ぎ、弱い立場になりがちな施工者を保護するために、建設業法第19条では「建設工事の請負契約は必ず書面で交わさなければならない」と厳格に規定しています。


📜 建設業法第19条(請負契約の内容)のポイント


建設工事の請負契約の当事者は、次に掲げる16項目を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければなりません。(※第19条第2項により、追加工事などの契約内容変更時にも同様に書面の相互交付が義務付けられています



  • ① 工事内容 / ② 請負代金の額 / ③ 工事着手および完成の時期

  • ④ 工事を施工しない日・時間帯の定め / ⑤ 前金払や出来形払の時期・方法

  • ⑥ 設計変更・工期変更・代金変更の条件および計算方法

  • ⑦ 不可抗力による損害の負担 / ⑧ 物価変動等による代金変更の計算方法

  • ⑨ 第三者への賠償金負担 / ⑩ 資材提供・機械貸与の内容

  • ⑪ 完成検査・引渡しの時期 / ⑫ 請負代金の支払時期・方法

  • ⑬ 契約不適合責任(不適合担保責任)の内容 / ⑭ 遅延損害金・違約金

  • ⑮ 紛争解決方法 / ⑯ その他国土交通省令で定める事項




※なお、第19条第3項に基づき、事前に相手方の承諾を得た上で電子契約(電磁的措置)を利用する場合は、紙の書面交付に代えることができます。



元請業者や注文者が追加工事を書面化せず、口頭だけで指示して施工させる行為自体が、明確な建設業法第19条違反(指示処分や営業停止処分の対象)となります。

不当に低い請負代金の禁止と踏み倒しの違法性


追加工事を施工させた後、事前に書面を交わさなかったことを逆手にとって「後から聞いていない」「そんな高額は払わない」と費用の一方的な減額や踏み倒しを行う行為は、建設業法第19条の3に抵触する違法行為です。


📜 建設業法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)




第1項(注文者側): 注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。




第2項(受注者側): 建設業者は、自らが保有する低廉な資材を用いることができる等の正当な理由がある場合を除き、通常必要と認められる原価に満たない金額で請負契約を締結してはならない。




追加工事にかかる材料費や人件費(通常必要と認められる原価)を無視し、後から言いがかりをつけて不当に低い金額を提示したり、ゼロに踏み倒そうとしたりする行為は、元請の優越的地位の乱用として「建設業法第19条の3」に直接違反します。

追加工事トラブルを防ぐ実務上の予防策


「言った言わない」の泥沼トラブルや代金の未払いを防止するために、現場で徹底すべき実務手順をまとめました。


📋 追加工事の請負トラブルを防ぐ3大鉄則




事前に変更書面を交わす

施工に着手する前に、建設業法第19条第2項に基づき「工事内容変更合意書」や「追加見言書・注文書」を相互に交付する。

即時書面化(メール・LINE等)

どうしても現場が急ぎで正式な書面が間に合わない場合は、「〇〇の追加工事(概算〇〇万円)を承りました」とメールやLINE、打合せ記録簿で即座に文字に残し、相手の了解の返信を得る。

写真・状況証拠の保存

追加工事を行う前と施工後の現場写真を撮影し、指示された日付と指示者の名前を記録に残しておく。



まとめ:書面の交付徹底が自社の利益と信頼を守る


口頭契約は民法上有効であるものの建設業法上は「書面交付義務違反であり、代金の不当な切り捨ては「不当に低い請負代金の禁止違反」にあたる違法行為です。

今までお世話になっている元請だから」「気まずくて書面を出してと言えない」と口頭のまま工事を受けてしまうと、最終的に不利益を被るのは自社や下請け職人さんたちです。建設業法に定められた適正な書面作成や、契約トラブルに関する予防策についてしっかりと行う事が重要になってきます。






※留意事項

当ブログの記事は、行政書士試験合格者としての学習・研究の一環として作成したものです。現時点では行政書士登録前の立場であり、専門家としての助言や業務提供を目的とした内容ではありません。最新の法改正や個別事情については、必ず行政庁や専門家へご確認ください。