特定建設業許可の最難関!欠損比率20%以下と流動比率計算実務
特定建設業許可の取得・維持において、多くの経営者が最も頭を悩ませるのが「
財産的基礎要件」です。
なかでも、赤字を出してしまった会社が直面する最大の壁が
「欠損比率20%以下」のルールです。この基準は「1円」でもオーバーした時点で、特定許可の新規取得や5年ごとの更新が認められなくなるという極めてシビアな要件です。今回は、手引きに沿った法人・個人の「
欠損の額」の正しい計算式と、もう一つの重要財務比率である
「流動比率」の計算手順を徹底的にわかりやすく解説します!
特定許可で生死を分ける欠損比率のルール
まず前提として、手引きにある「
欠損の額が20%を超えていないこと」という条件における、パーセンテージの正確な判定ラインを整理します。
- 「20%を超えていない」 = 20%以下(20.0%をぴったり含む。クリア!)
- 「20%を超える」 = 20.000...1%からアウト(20%ちょうどは含まないためNG)
※なお、直近決算で「繰越利益剰余金がプラス(黒字)」である場合や、資本剰余金、利益準備金、その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く)の合計が
繰越利益剰余金のマイナス(負)の額を上回ってカバーできている場合は、
既に要件を100%満たしているため、この計算式を用いて
シミュレーションする必要はありません。
法人の欠損比率を計算するステップと具体例
法人の場合、決算書上の赤字の蓄積が資本金に対してどれだけ膨らんでいるかを2ステップで算出します。欠損とは、法人の場合、貸借対照表のマイナスの繰越利益剰余金が、資本剰余金、利益準備金、その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く)の合計金額を上回る額のことを言っています。
ステップ1:「欠損の額」を計算する
欠損の額 = 繰越利益剰余金のマイナス額 - (資本剰余金 + 利益準備金 + その他利益剰余金)
※その他利益剰余金からは「繰越利益剰余金」を除きます。
※そもそも「繰越利益剰余金」がマイナス(赤字)でなければ、欠損の額は「0円」となり自動クリアです。繰越利益剰余金がマイナスであっても、資本剰余金などのプラスの合計額の方が大きく、赤字をすべてカバーできていれば欠損の額は「0円」となります。
ステップ2:「欠損比率」を計算する
欠損比率(%) = (欠損の額 ÷ 資本金) × 100
📊 実際に数字を当てはめて計算してみよう!
以下の貸借対照表(純資産の部)データを用いて、実際に計算してみます。
💡 対象会社の純資産データ
- ① 資本金: 30,000 千円
- ② 繰越利益剰余金: △10,000 千円
- ③ 資本剰余金: 2,000 千円
- ④ 利益準備金: 1,000 千円
- ⑤ その他利益剰余金(任意積立金): 1,000 千円
🧮 計算ロードマップ
- カバーできる純資産の合計(③+④+⑤)を算出する:
2,000千円 + 1,000千円 + 1,000千円 = 4,000千円
- 「欠損の額」を算出する(②から上記合計を差し引く):
10,000千円(マイナス幅) - 4,000千円 = 6,000千円
- 「欠損比率」を算出する(資本金①で割る):
(6,000千円 ÷ 30,000千円) × 100 = 20%
🎯 判定結果:欠損比率はちょうど「20%」です。20%を超えていない(20%以下に美しく収まっている)ため、この会社は特定建設業許可の財産的基礎要件を満たすことができます!
個人事業主の欠損比率を計算するステップ
個人の場合は、事業から生じた損失と事業主勘定、利益留保性の準備金等を用いて計算を行います。個人の場合における欠損とは、事業主損失が、「事業主借勘定」から「事業主貸勘定」の額を引いた額に、負債の部に計上されている利益留保性の引当金、準備金を加えた額を上回る額のことを言います。
ステップ1:「欠損の額」を計算する
欠損の額 = 事業主損失 - {(事業主借勘定 - 事業主貸勘定) + 負債の部に計上されている利益留保性の引当金および準備金 }
ステップ2:「欠損比率」を計算する
欠損比率(%) = (欠損の額 ÷ 期首資本金) × 100
個人事業主の場合も、この計算結果が
「20%以内」であれば、特定許可の欠損要件をクリアすることができます。
特定許可で必ずセットになる流動比率の計算手順
特定建設業許可の財務審査では、上記の欠損比率のほかにもう一つの「%基準」が課されます。それが短期的な支払い能力のクッション性を表す
「流動比率(りゅうどうひりつ)」です。流動比率は原則として
「75%以上」をキープしなければなりません。
流動比率(%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
⚠️ ここが繋がる!実務の注意ポイント
「流動負債」の項目で解説した通り、本来は長期返済のはずの役員借入金等を「短期借入金」のまま流動負債に載せていると、流動比率の計算において分母が大きくなってしまいます。その結果、流動比率が75%を下回り、特定許可基準を満たせなくなるリスクが高まります。決算前の適正な仕分けと振り替えがどれほど重要かが、この計算式からも見て取れます。
まとめ
特定建設業許可の財産要件をクリアするための計算ステップはシンプルです。
🎯 決算前に社長が絶対に確認すべき特定許可の2大数値
| 欠損比率 |
赤字が発生している場合、法人であれば(欠損の額 ÷ 資本金)の比率が「20%以内(20.0%以下)」に収まっているか? |
| 流動比率 |
流動資産が流動負債に対して「75%以上」確保できているか?(短期借入金や役員借入金の長期化処理も考慮する) |
※留意事項
当ブログの記事は、行政書士試験合格者としての学習・研究の一環として作成したものです。現時点では行政書士登録前の立場であり、専門家としての助言や業務提供を目的とした内容ではありません。最新の法改正や個別事情については、必ず行政庁や専門家へご確認ください。